よりもい13話の感想と考察と妄想

 

 

アニメ「宇宙よりも遠い場所」の12話に関するオタクの個人的な妄想、妄言です。

13話、そのままで良過ぎるので、多くは書けませんが...

 

 

・確かに笑ったところがそっくり。

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・報瀬のスピーチが良過ぎる。最高。

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・「大人はね、正直になっちゃいけない瞬間があるの」ってセリフなぁ~かっこいいなぁ...

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・オーロラの流れ、最高。もう、最高。天才すぎる...オーロラの伏線はずっと張ってましたよね。あと、寝っ転がるのも、8話冒頭で伏線ありましたね。ついでに、「南極星を見る」も達成したらしいです。

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全編のまとめ

 旅が終わり、それぞれの日常に戻っていく4人なんだけど、「一緒にいられなくても、一緒にいられる」とキマリが言うように、今はそれぞれの道を進んでいくのが良すぎて泣いちゃいますよね。これこそ、子供から大人になっていく成長(=青春)というテーマを描いた「よりもい」という作品における、そのテーマに対する答えだと思っています。

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 心がしんどいですね。12話で全て解決してあの雰囲気を最終回とするアニメもあると思うんですが、よりもいは13話で「それから」を描いていて、それがすごく心に来る。旅が終わる時の切なさとか、観測隊員との別れの寂しさとか、それでも前を向いている4人とか。あまりに美しくて、泣いてしまう。よりもいの良さは13話であると思います。敵わない、と毎回思います。4人がこれから進んでいく事が明らかになっていて、それは自分でも分かっているから、視聴者は敵わない。泣くしかないと思います。

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 いつも一緒にいることでしか安心できない、依存的な人間関係から、離れた場所でお互い違う人生を過ごしていても、繋がりを感じられる関係が大人らしさであると結論づけられると思います。このようなテーマは他のアニメでも取り上げられていて、「電脳コイル」最終回の26話では、イサコとヤサコが「同じ道を迷って同じ道を目指した仲間。また会おう、同じ道を迷ったときに」と別々の中学校に進学していく終わり方なんですが、これも同様の関係性を選択しています。こういう終わり方、かっこよくて憧れちゃうし、泣いてしまうほど好きな終わり方なんですよね。

 いや~最高のアニメ。オリジナルアニメ作品として、良さを存分に表現できているというか。あまりにもすごすぎて、崇めるべきだとさえ思ってしまいます。自分の中では、かなり考察を深めた作品になったんですが、理解していない伏線だったり、演出だったり、作り手の意図は、まだまだ残っていると思うので、本当に深くて楽しめるアニメ作品だと思います。よりもいは本当に素晴らしいアニメなので、多くの人に好きになってもらいたいなぁと思います。

 

 

最後に

 かなり感想を省いているので、色々伝わりにくくなってたかもしれませんが、最後まで読んでくださった方がいたら、ありがとうございました。

 

 

 

よりもい11話の感想と考察と妄想

 

 

アニメ「宇宙よりも遠い場所」の11話に関するオタクの個人的な妄想、妄言です。

 

・キマリが日焼け跡を隠すために、顔を隠したら、強盗みたいだからやってみたっていう話の流れなんでしょうね。キマリが持ってる銃は8話の水鉄砲ですね。

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・結月のこの悪そうな顔と「ぐっ……くきき……」って笑い方大好き。

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内地への迷い

ここで吟が内地へ行くのを迷っているのが大切な伏線になるんですよね。

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いつもと違う日向

  「日向!えと…さっき…」「さっきのはテストだから借りにはしないぞ」「違う」

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 完全に何もなかったように振舞う日向にさっきの事を言おうとするが、遮られてしまう。この時の怪訝な表情の報瀬には心配と不信感の芽生えがあると思う。それと同時にそこまでして日向が隠したいことだから、よほど知られたくない事なのかなっていう迷いが浮上したはず。だから思い切って話を切り出せなくなっちゃったわけですよね。さらに6話で日向に歩み寄ろうとしたら、気を遣われるのが嫌いと距離を保たれたという経験があるから、下手に心配を伝えられないという考えが出てくると思います。

 

 吟にとっての貴子が、近くにいるのに自分の手が届かない「雲のような人」であった。ここでそらを見上げる報瀬は、日向に対する憧れ、近づきたいけど遠く感じる気持ちが描写されているのかも、と思いました。恐らく吟も貴子とは友達という関係であるけど、「諦めなさ」や「思いの強さ」に尊敬している、憧れている気持ちがあったと思うから。

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キマリの気遣い

 キマリの「ここにも来たって、報瀬ちゃん。良かったね!」はこのテンションで話すには繊細過ぎる話題では?って思った。さらに安本保奈美が「やったよー3年前一緒に。何でもやりたがったからねー貴子先輩」って返答していることから、キマリが「報瀬ちゃんのお母さんもこれやってました?」的な露骨な訊き方をしているわけだし。

 でも9話で報瀬とかなえの会話を聞いていたことを加味すると、南極に来たことで報瀬に変化が訪れて欲しいのであって、それをオーバーに、不自然にやってしまうのがキマリであると納得した。結局キマリのそういう部分のおかげで12話で報瀬はノートパソコンを見つけられるわけだし。

 

報瀬に麻雀をさせる

 報瀬にマージャンさせるっていう、一手が脚本的に効果的だと思いました。キマリのあほっぽさを出しながら、日向に「もともと報瀬は心狭いからなー」っていうセリフで伏線を張らせる。さらに報瀬が別行動することで報瀬だけにメールが来ている事を教えられる。

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 「もともと報瀬は心狭いからなー」と言いつつ、ブロックしている状態から削除しようとしている自分の方が心が狭い?と思って躊躇う。多分自分が彼女たちを許してしまえば、それは過去になって自分以外の誰も嫌な思いを残さずに解決するという考えが日向の中にはある。それはいつも通りの日向の自己犠牲方向での解決だから。悪意の中で自分の心を守るための「悪意に悪意で向き合うな。胸を張れ」っていう考えに基づいているから。そうやって、大人っぽく、冷静に、物事に向き合ってきたのが日向であるし、それを報瀬は自分にはない部分だと思って憧れていたように、日向の長所でもある。しかし憧れていたのは報瀬だけじゃなくて、日向だってそうで。報瀬が自分の気持ちを思いっきり表現できる部分を日向は尊敬しているといえると思う。だから自分が嫌な思いしたまま、日本との中継を平気な顔を作ってやり過ごすっていう以外の解決を心のどこかで望んだと思う。

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日向と報瀬

 3話において他人への配慮が欠けていることに気づいた報瀬は、日向に憧れや尊敬に近い感情を持ったと思います。だから日向に接するときに多分普段より気を遣ってしまう報瀬がいると思うんだよ。例えば、6話でパスポート紛失によって南極に行けない不安を話した後に、日向の気持ちを考えてないことに気が付き、慌ててフォローしようとしたのも、日向との3話があってこそだと思う。自分がされて嬉しいことを相手にも返そうって考えるのは、「互恵性規範」であり自然な行動だと思います。

 しかし日向は自分が気を遣いまくるけど、他人に気を遣われたくないっていう性格なのでこの報瀬なりの優しさは届かない。ここの行き違いがちょっと好きなんだよね~日向は2話で言っているように報瀬とキマリの「嘘ついてない感じ」が好き、報瀬も日向の思いやりができる人となりが好き→報瀬は日向に近づきたいから気遣いできることを目指す→それが少しずつできるようになって2人とも嬉しそう(3話のファミレス後)、ここまでは最高に良いんだよ。でも日向はその気遣いの方向が自分に向けられると、途端に拒絶してしまう。6話のようにいきなり溝が生まれてしまう。これはね~双方とも悪くないんだよ。

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日向の隠し事

 ここの「一人にしちゃってごめんね。」は日向から一人で心配していた報瀬への気持ちが「一人にしちゃってごめんね。」に被っている可能性もある?と考えている。ここでは、日向が本心を隠すことで報瀬が日向を信じられなくなる可能性について、報瀬が言及している。その可能性が現実になると、日向が報瀬に対して隠し事をしている事実は、元チームメイトが本心を隠して日向を人間不信に陥れた事実と、「本心を見せず、相手に不信感を与えて傷つける」という点において重なる部分が出てくるわけで。日向がそれを理解した上で、話すという選択肢を取ったと考えたいですね、個人的な欲求として。それがあの表情の日向が描かれた後に「一人にしちゃってごめんね。」が映し出された意味、つまり、「無自覚のうちに自分が相手をを傷つける側になる可能性を認識した描写」になりえないかな?と勝手に考えている。

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 まだ淀んでいない水

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 日向が「負け犬で申し訳ない!」って言っているの、自己犠牲でみんなの気持ちを収めようとか、重苦しい空気が嫌で自分の惨めさを誤魔化したい気持ちとかいろいろ含まれてると感じたが、一番大きいのは「相手が全面的に悪いのに自分が学校から逃げ出したことへの負の感情」であり、これは報瀬の「悪いのは完全に向こうじゃない!」っていう正しすぎるセリフが引き出しているセリフだと思った。報瀬は自分が間違っていなければ自分を曲げないという性格なので、こういう風に考えるわけで、それを知っている日向は正しくまっすぐな報瀬とそこまで強くなれない自分を対比して、劣っていると感じるから「申し訳ない」って気持ちがある、気がする。

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水を汲みに行く2人

 「私さ、ずっと考えてた。日向と同じだったらどう思うだろうって」「ひどい目に遭わされて、でもある日何事もなかったように連絡してきて、もう取り返しはつかないのに謝ってきたりして」「平気でいられるわけない、笑ってなんかいられない」

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 でもあくまで日向の気持ちになった報瀬だから「報瀬は私じゃないだろ」って返される。報瀬が日向の立場に立っているんだよなぁ。報瀬の成長なんだよぉ。こっから妄想チックで、さっき少し書いたけど、6話で報瀬がやっていた気遣いって日向を尊敬している、見上げているからこその配慮だったと思うんです。で、さっきの報瀬がそらを見上げるシーンは「報瀬にとっての日向も近くにいるのに遠くに感じてしまう点」を表していると書いた。けれどこのシーンの時点では、日向の過去が明かされて、報瀬が憧れている部分以外の弱い部分も報瀬は知ることになって、自分と同じ17歳であることが分かって、日向の立場に立って気持ちを考えられたと思うんです。その結果「報瀬は私じゃないだろ」って呆れて返されるわけですが、日向は報瀬の気持ちを受け止めているわけです。こんな感じで、日向が嫌がっていた6話の気遣いと、今回の気遣いって全く別物だと思うのよ。前者で上の人だった日向が後者では報瀬の隣に並んでいるイメージ。11話では6話で報瀬が思いを告白するシーンと比べてこのような相違点があり、他方で報瀬が気遣いという点で共通していると考えています。こうなったのは日向が自分の弱い所を見せてくれたからであり、報瀬のおかげだと思います。

 

  「手だけでいい、報瀬余計なことばっか言ってうるさいから」 「ありがとう。ごめんな。私、多分まだ、怖いんだよ」

 「私、多分まだ、怖いんだよ」って伝えることはできるのに、そこまで弱さを共有している段階まで達しているのに、自分以外の人を怖いと感じてしまうのが、もどかしい。それって報瀬がどう言ったってどうしようもなくて、さらに悲しくなるから、日向は手だけでいいって言ったと分かる。

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 日向は一瞬、「報瀬」って呼んでそのまま抱きしめようとしたと思うんですよね。でも実際には腕を組んで報瀬に手袋を外すように言った。これ個人的に難しいけど、抱きしめることに対して、恐らく「ごめんな。私、多分まだ、怖いんだよ」の気持ちがあるっていうことだと思うんですよね。

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 これに対して報瀬は「でも!私たちは」って反射的に言ってしまうし、日向もデコピンしつつも報瀬がこう言ってくれたのが嬉しくて、安心して。だから「連れてきてくれてありがとう」って報瀬を抱きしめることができたんだと思っています。報瀬の不器用さと強い気持ちの両方を受け止める日向。日向って報瀬以上に報瀬の良い所も悪い所も理解しているんじゃないかと感じさせるシーンですよね。あと、報瀬の不器用さと強い気持ちってもう最初の方からずっと一貫している性格なんですよね。キャラが全くブレずに、でも成長しながら物語が進んでいく。ほんとに良いキャラクター、良いアニメだと唸っています。

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 このシーンで報瀬がわざわざ手袋をしているのには意味があると思うのよ。寒いから手袋しているんだろうけど、日向はしていないし。キマリが喋っているシーンでわざわざピントがズレたところで手袋しているところが描かれているし。じゃあなんでかっていうと、報瀬と日向の間の温かみが伝わるのを阻害するモノの象徴を手袋と考えても良いんじゃないかな~と思いました。ここでは報瀬の手=気持ちであると思うので、言葉=手袋と考えて、報瀬の良い所は気持ちなのにそれを言葉で伝えるのが不器用で、気持ちだけで伝えて欲しいってシーンだから、手袋を外させるって合うと思うんだよね。手袋をしながら何かをするって本来の手の動きが伝わりにくい=不器用、という部分も重なるし。

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 さらに妄想させてもらうと、自分だったら日向に手袋させといて、外させたくなっちゃうぅ~って思いました。外からの冷気から身を守るための手袋のせいで報瀬の温かささえも、伝わりにくくなっちゃっている部分が日向っぽいと思うので。

 

 

日向の過去との決別のシーン

 「許したら楽になると思うか?」「許したい?」「それで私が楽になるならな。けど、それでホッとしてるあいつらの顔を想像すると腹は立つな」「ざけんな?」「だなー、ちっちゃいなー私も」

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 「ざけんな?」ってセリフについて、11話冒頭で日向が「ふざけんな!」って暴れてたのを報瀬が見ていたからってのもあるけど、報瀬が自分の「ざまあみろ」って気持ちに近いと感じているとも思います。なので「だなー、ちっちゃいなー私も」の「も」は報瀬を想定しているし。

 「ざけんな」って感情は傍(日向)から見ると「ちっちゃいなー」って感じであると、この会話から分かりますよね。「ちっちゃいなー」と似ている「心狭い」ってワードが使われていた風呂上がりのシーンを見返すと、「もともと報瀬は心狭いからな~」って言いつつ、元チームメイトをラインから削除しようとしている日向が、このような「報瀬の許せない性格」を笑いながら、自分の許せない気持ちに悩んでいる描写であると理解できると思います。

 でさーこの「ちっちゃいなー、私も」ってカットがすごい。天才的に良すぎる。一番好きなカットです。このどうしようもなく助けを求めている表情もすごいし、ここまでの日向の気持ちが全部乗っているような話し方も。一気に引き込まれる、日向の気持ちに立たざるを得ない、4秒くらいのカットだけど、めちゃくちゃ心にくる、すごいカットだと思います。

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 この部分てさ、一番難しいじゃん。これまで頑なに大人っぽく振舞い続けて、距離を保ってきた日向がさ、前のシーンで報瀬の気持ちを受け入れることができた。でも、日向から報瀬に助けを求める、ないしは歩み寄らないといけない。そうでないと、報瀬が日向のために怒って解決しても、その怒り方は日向の気持ちからズレてしまうかもしれない、それこそ本当に「報瀬の思い込み」になりかねないわけですよ。だから日向から助けて欲しいって気持ちを引き出す必要があって、でもそんな簡単に言い出せる日向じゃないし、「まだ怖い」わけだから、はっきり「助けて」なんて言わせられない。その中でこの表情と、この演技はめちゃくちゃ難しい部分を、完璧に仕立て上げているから、本当にやばい。おじさんはこの部分で毎回泣いちゃうよ...

 

  

 「けど!そんなことないから!」「日向ちゃんは今、私たちと最高ーーーに楽しくて、超充実した、そこにいたら絶対できないような旅をしてるの!!」

 なんで10話で伏線張ってまで11話でキマリに変な日焼けをさせたか?って疑問があると思うんですよ。もちろんキマリのキャラを深めるエピソードとしてあるんですが。「結局日焼け治らなかった」「エンジョイしている証ですよ」っていう会話から、南極を楽しんでることの証拠としての役割があると思うんですよ。キマリが元チームメイトに対して言った「最高ーーーに楽しくて、超充実した、そこにいたら絶対できないような旅をしてるの!!」ってセリフもこの部分に由来していると思うの。誰からどう見られようと自分たちは関係なく前を向いている。負け犬で見下されてるけど、4人で前進して楽しんでいるっていう説得力があると思うのよ。彼女らは中継に映る際の自分の顔を鏡でチェックしているわけですが、その周りから見た自分を気にしている態度と対照的ですよね。日向たちはもはや、そのレベルにいないって話なんですよ。

 変な日焼けはコミカルパートの与太話だと思わせといて、物語に重要な鍵になっているの、面白いよなぁ。

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 「日向はもうとっくに前を向いて、もうとっくに歩き出しているから!私たちと一緒に踏み出しているから!」

 これは日向に対するメッセージでもあるんですよね。実際に日向は一歩踏み出しているんですけど、報瀬が宣言することで日向をそっちの方へ引っ張っていく。日向がまだ過去と決別できていなくても、報瀬がまだ問題を解決できていなくても、旅に出たっていう行為が前を向いて、前進できている証拠だと思うんですよ。

 

 

 「私は日向と違って性格悪いからはっきり言う。あなたたちはそのまま、モヤモヤした気持ちを引きずって生きていきなよ!人を傷つけて苦しめたんだよ、それくらい抱えて生きていきなよ!」「それが人を傷つけた代償だよ!私の友達を傷つけた代償だよ!」「いまさらなによ。ざけんなよ!」

 報瀬、かっこよすぎる。

 この2枚の画って同じ方向(中継用カメラの方向)を向いているはずなのに、1枚目は顔の左側が陰になっている。前後のカットを見ても影が出ているのはここだけ。ってことは「私は日向と違って性格悪いから」ってセリフから影のイメージを作っているんだと思います。

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報瀬から吟への伝播

 吟が「準備しようか」っていうカット、カメラワーク的にはトラックなんですけど、これって風景とか周りの状況の画を映すときとかに使われると思うんです。11話でも風景の描写は大抵これだと思いますし、中継前に話す報瀬に注目する隊員たちも同様で、報瀬が中心であるのに対して「状況」として描かれていると感じるはずなんですよ。で、報瀬を見た後の吟をこういう風に移すことで、一瞬「状況」である、と感じさせると思うんですよ。

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 普通ならそうなるだろっていう前提をカメラワークで伝えておいて、突然吟が立ち上がることによって、『ところがどっこい、違うんです!報瀬の「思いの強さ」を見た吟は「状況」ではなく、「主体」になっていくんです!これがよりもいです!!』ってよりもいが強く主張しているんでは!?って考えが止まらないんですよね。個人的には。もしそうなら、もっと好きになってしまう、好き。

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6話と11話の比較

 6話と11話を比較してみます。まず、スタートが日向の抱える問題という点で2つの話は共通している。6話ではパスポート紛失がバレる、11話では元同級生が現れる。ただでさえ日向は迷惑を掛けたくない性格なので、6話ではパスポート無くしたのを隠したまま観光を続けて、結月の疑り深い性格があってようやく紛失を認めた。これが11話では、よりバレたくないことで、より話したところで解決しなさそうなことで、より気を遣われそうなことだから絶対に日向は話さない。必死に隠す。その点で6話とは異なり、日向の問題解決の前に問題を知る段階が困難である。今回は結月が訝しむ余地もないほど日向が意識的に明るく振舞っていると思うので、報瀬が問題を明らかにしなければいけない。

 それに対して報瀬は日向が心配になることから始まって、無理やりでも日向の悩みに近づこうとする。6話の報瀬も自分中心で考えていることをすぐに自省している(3話での反省を生かして)から成長しているんだけど、その6話からさらに変わっていったのが11話での報瀬。

 報瀬に心配ないし気遣いされそうになった日向はどちらの話でも自己犠牲を伴った解決に向かおうとする。6話では自分を置いて先にオーストラリアに向かえと言い、11話では日向の過去の話を忘れろと言う。自分が嫌な気持ちでも周りに迷惑を掛けたくないのは人間が怖いからですよね。

 11話の「そうされてると、私が嫌な気になる」は6話の「そっちの方が気持ちが良い、私が」と似ていて、自分が心配されて嫌だって気持ちははっきり言葉に出すんだよね、日向は。だから本心を見せているようで、壁があるように思える言葉の使い方だと思った。

 「意味なくなんかないから」って報瀬が言えているのがね~成長なんですよ~上で書いたように日向が心配かけない方向に自分の気持ちを置きに行くのは6話と11話で共通しているんだけど、6話ではそれに対してふて寝してしまう。けれど11話では自分たちが日向の事を真剣に考えて思慮することに意味があると反論する。このセリフが出たのって、日向が自分を置いて先に行けって言ったくせに、4人で行くって言われて嬉しかった6話を報瀬が経験しているからだと思うんですよね。だから今回も、「日向がこういう言い方をしているんだから、自分たちに心配かけたくない気持ちが強いんだろうな」っていう事を報瀬は分かっていて、6話の最後でそうしたように自分の気持ちを日向に押し出している、そんなシーンだと思います。

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 だからここの日向のセリフで納得して、日向の過去を忘れるって言ったキマリと結月が鈍いとか薄情なわけではないんですよ。この2人は本当に日向の「そうされてると、私が嫌な気になる」を完璧な本心だと思っているから。6話で日向に深く関わった報瀬と違って。さらに言えば、日向が外で怒鳴り散らすシーンを見ているのは報瀬だけで、キマリと結月は報瀬の「だって一人でなんか怒ってたから」ってセリフしか聞いていないので、日向がどれほど荒れていたか知らない。日向がどのくらい引きずっているかは想像しかできないと思うんだよ。

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11話まとめ

 一番早く感じる22分では?それくらい良さの回ですね。

 

 

12話に続く 

taji488.hatenablog.com

 

 

 

よりもい10話の感想と考察と妄想

 

 

アニメ「宇宙よりも遠い場所」の4話に関するオタクの個人的な妄想、妄言です。

 

 

・初っ端から面白い映像だと思いました。前回南極に降り立って、目標達成を喜んでエンディングを迎えたわけで。それにつづく10話は当然南極に降り立って南極生活スタート!かと見せかけて、実はまだ船の上でした~~~こっからはヘリで昭和基地に向かいます~~~って言っている映像ですね。このヘリを入れたので少し違和感のある画とかすごくいいよね。

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・なんか、ここの報瀬いつもより美しさ度、可愛さ度が高くない??いつもより耳が小さめかなぁ...いいよ~

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友達関係、青春アニメ

 「こんな風に一緒にいられなくなっちゃうんですよ」「ドラマが無くてもそれぞれ生活バラバラだしな」

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 ここではまだ、結月は普通の高校生的な友人関係に憧れているというか、それが友達である必要条件だと思っているわけですよね。それはやっぱり友達がいなかったからだと思う。ずっと一緒にいられる友達なんていないわけで、それって様々な人と関わっていく中で分かるわけで。そうなると結月はその部分を経験していないから、友達ってずっとくっついているものだと思っている。

 いやでも、その気持ちは分かるよね。これまで友達がいなくてやっと素敵な仲間ができたら、できるだけ長い時間一緒にいたいと思うじゃん。普通のアニメだとそうだと思いますし。「この時間がずっと続けばいいのに」って方が青春アニメとしては王道というか、正しいといっても過言ではないと思う。この時の結月の気持ちもこっち寄りだといえる。しかし、よりもい全体ではそうではない。もちろんこの時間は大切なんだけど、それでもこの旅に終わりが来ることを平然と受け入れている。13話で帰国した後では4人ともが前を向いているわけですよ、振り返らずに。「いまが最高」ではないのよ。これって結局よりもいの物語が「よりもいはキマリたちも大人たちも、どこか負け犬で、それをリベンジする話でもあるので」って部分が大きな要因であると思います。「いまが最高」の青春アニメは一般的に上に凸な放物線の頂点をカメラで覗いて撮影していて、そういうアニメが面白くないわけではなく、最高潮の部分をアニメにしたら当然面白いと思う。さらに言えば、よくよくその拡大図を見てみればその頂点を描く線も、波を描いていたりして、常に素晴らしい青春ではないはずだから、見ごたえもあるはずだし。しかしよりもいは下に凸な放物線なのよ。最小値でくすぶっていた4人がスタートして、右肩上がりに進んでいく物語。だから、ここが終わりではない。これから4人それぞれが大人になっていく部分も上昇の過程。これってちゃんと最小値をとる頂点をプロットしてあるから、進みだした軌跡がどこまでも上に伸びる曲線を描くって分かる。その途中には色んな困難があって、完璧な線を描けないかもしれないけれども。

 だから最高で、だから感動する。だから13話で前を向いている4人に号泣してしまう。これから上を向いて進んでいくことが分かってしまうから。13話終わりで4人の未来を視聴者に見せることができている。よりもいのこの部分が、ほんとにすごいと思っているし、心にくる理由だと個人的に感じています。

 

親友問題

 結月の「親友なんですか?」から始まる親友の定義問題について、結月がここまでこだわるのって、結月が言葉や形が欲しい派だからだと思っています。3話で寝る前に結月がキマリにぎゅっとされたことを回想していて、強い印象に残ってることが分かるんですが、こういう部分でも結月が相手の気持ちを汲み取るとかよりも、形あるもので伝えて欲しい派なんじゃないかなぁと感じました。だから「なんとなく親友になった」では不安な気持ちになるというか。

 

 

ケーキの飾りの意味

 サンタの砂糖菓子とチョコプレートが意図的に描かれているのはあると思うんですが、食べる前の画を見ているのは結月で、切られた後に残っている画に視線を移したのが報瀬なんです。こういうサンタの砂糖菓子やチョコプレートって、ケーキの中央にあるから注目を集めているわけで、ケーキにおける花形だと、ぱっと見て思うんですよ。それを結月は眺めて羨ましく感じているわけですよ。けれど実際は、このデコレーションって見かけ上のもので、誰も食べずに余ってしまう、残ってしまうただのお飾り。そう感じているのが報瀬なんですよ。形式的に祝ったとしても、意味はない的な。サンタも1枚目では上を向いているけど、2枚目ではうつむいちゃってるし。

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 つまり、結月は形だけのものであってもそれに対して強い憧れと希望があって、それは、幼稚園のとき、小学生の頃、中学生時代においてずっと「友達」が概念や言葉でしかなかった為だと考えられますよね。一方で、報瀬そういう形式的な友情は無意味だと考えている。「前にも何人かそういう事言ってくれた人がいた。でもみんなすぐいなくなるの」らへんの部分がそういう考え方を形成した理由だと考えられますよね。

 だから、結局報瀬の考えでは、方法では結月は救えない。報瀬は6話の事があって自分の気持ちを結月に伝えることは、ちゃんとやってるんだよね。日向は気を遣われたくないって言ったから。けれど、結月に対してはそれは届かない。結月と一緒にケーキの準備をして、気持ちを聞いたけれども、報瀬には救うことができない。一方で、結月とは別々の場所にいるキマリは着々と準備を進めて「解凍」をしている。恐らく、この後に出てくるチョコプレートに手書きで結月の名前を書いたのも、キマリだろうし。だから今回結月の助けになれたのはキマリ。でも説得を試みた報瀬の失敗ですらも、11話への伏線にしてしまうという話の流れは、強いし、すごい。

 

結月とキマリ

 友達誓約書に対して報瀬が「こんなの意味ない」って自分の経験をもとにして、自分の考えをもとにして伝えるのは分かるんだけど、本当に友達が分かっていない結月には、キマリが示したように「泣く」「抱きしめる」っていう感情表現の仕方が一番理解できる。ここでキマリが泣きだしてしまうのって、3話で抱きしめたくなったのと同様に、コミュニケーションの仕方が直接的というか、子供っぽいから。キマリの精神的幼さって1話のタイトルアバンで突然感情が溢れてしまったり、髪を自分で切っていたり、寝相と寝言が酷かったり、で表されてきていて。そういうネガティブな側面もあるけど、今回はそういう感情表現の仕方が結月に伝わりやすくて、解決に繋がった。と感じています。

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結月と報瀬

 「ちゃんと話せる自信ない」「じゃあほっとくか?」「そうとは言ってない」

 ここら辺がね~まーじ報瀬の良さ、あるんだよね~報瀬は思った事を躊躇わず言葉にするタイプの人間じゃないですか。最初の頃って、自分の気持ちをそのまま口に出していたんですが(1話での「無理だって言った全員にざまあみろって言ってやる」「そしたら本気だって信じる」)、その報瀬が他人への気配りが上手な日向と出会って、他人の事を考えるようになって。3話で結月を気にかけて結果的に、少し結月に近づけて、6話で日向に気を遣ったら、逆効果になってしまい、結局は自分の本心をぶつけることで解決をした。この10話では結月の気持ちを理解しきらずに上手くいかない。はっきりいえば、ほとんどうまく行ってないと思います、報瀬の気遣い。欠点を隠そうとした行為がさらにうまく行かず、結局欠点を長所として用いて解決するって感じなんですよ。報瀬が気遣っているときって大抵言動に勢いがなくて、日向に論破されてしまったりだとか(6話)、途中で言うべきことが見つからず日向にパスしたりだとか(10話)、っていう結果になっている。それに対して自分が思っている事を話す報瀬はどこまでも強く、まっすぐなんですよ。それでも、こういう風に報瀬なりに試行錯誤しながら、仲間の気持ちに寄り添っていこうとしているのが感じられて良い。最高。

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 「多分、形も言葉も何もない」という報瀬のスタンス

 「友達なんて、親子とも夫婦とも違う、ぼんやりしたものだし、いつ消えても誰も責任を負ったりしない」「少なくとも私はそう。でも、だから自由で、だから一緒にいられる気がする」のあとに吟とかなえが貴子に対して「ただいま」って言うのずるいなぁ!

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 当然「少なくとも私はそう。でも、だから自由で、だから一緒にいられる気がする」の部分では吟たちの関係を思い浮かべて、結月に言ってるわけですよ。古くからの友人であり、仲間であった貴子がいなくなって3年経ってもなお、吟は貴子と共にある。そんな大人を見て、報瀬はこの考えを持っているわけで。かっけーアニメだなぁ。

 

 

・結月が友達関係で悩んでいるのがラインで表現されていた3話、結月がラインで感じている距離感と既読スルー、キマリがメグっちゃんに感じている距離感と既読スルーは異なるわけですよね。現代のコミュニケーションの取り方を題材にしていて、新しさがあると感じました。

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11話に続く 

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よりもい9話の感想と考察と妄想

 

 

アニメ「宇宙よりも遠い場所」の9話に関するオタクの個人的な妄想、妄言です。

 

 

・日向が結月に「そんなの着ているからだろぉー」って言うのは結月が寒いのに弱い設定だからだけど、8話の艦上体育の時も、キマリと結月はダウン着てるし報瀬はネックウォーマーしてる9話でも半袖短パンの日向は、寒さに強い設定か?

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花を運ぶ吟

 吟が花を持っている。それに対して日向が「誕生日?」って疑問を持ったのはバースデーケーキに見えたからかな。それに対して結月が「えっ?」って言っている。そのことにキマリは気づいている。

 ここ、面白いですね。本来であれば、貴子に手向けるための花の伏線だと思うんですけど、それを日向にケーキだと誤認識させて、そこから結月が自分の誕生日を気にしている事を示唆する。さらに、それをキマリは察知することができてケーキを用意する計画に繋がる、というね。ただ、ここで報瀬はこの表情なんです。多分報瀬は貴子のための花だって、考えているんじゃないですかね~だからここはアニメの演出としてかなり興味深いと思いました。同じものに対してそれぞれ考えていることが違うという。

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雲みたいな人

「雲みたいな人」「雲ってすごいよね。掴めないのに、上見るといつもそこにある」

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 吟が雲について言及しているのは貴子が生きているときなので、いつも一緒に南極を目指しているんだけど、自分の手が届かない高い所にいる気がするくらい貴子の思いが強い。でも、目指す場所は同じで、常に自分を引っ張ってくれてる。みたいに感じました。

 一方、亡くなった後の貴子の事だと考えると、貴子はもういなくて、触れることもできない。なのに亡くなってもなお、自分の進むべき方向にいて、自分の前に立って引っ張っている的なまた違うニュアンスになってくる。と考えてます。

 

縄跳びの話

「だってあの子には吟ちゃんの魂が必要だから」

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 そのあとに縄跳びが上手くできずに、心折れそうになっている幼少期の報瀬に対して「できないの?」って吟が尋ねて、幼少時代の報瀬は素直に「はい」って答えている。できないことをこんなにあっさり認める、できないことを受け入れている報瀬って、現在の報瀬からはイメージが離れていると思います。そのあとに吟は初期の南極観測隊の話をして、諦めない事の大切さを説いたんだと思います。その結果、報瀬は縄跳びができるようになっている。報瀬に足りていないものが「諦めなさ」であり、それを過去に吟が補っていると言えると思います。

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報瀬と吟の会話

 回想での報瀬「でも行くんでしょ?」に対して貴子「うん」って答えているのが、貴子がなんで南極に行くのかという疑問の原点だと思います。それに対して13話で、答えを出す。いや~、しっかりしすぎているよ。吟と報瀬の関係を明かしながら、最終回の伏線張ってるじゃん。

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 「どう思っているか聞いておこうと思って。私の事」「憎んでる、って言って欲しいんですか?」

 吟は報瀬が自分に対して少なからず、恨んでいる部分があると思っていた。報瀬は、吟がそう考えていることまで、感じていた。この返しはそこまでの考えを持ってないと、すっと出てこないと思う。

 

 

 「落ち度があったんですか」「じゃあそれでいいじゃないですか」

  論理的に考えた場合。多分、このやり取りって報瀬は母の死を納得しようとするために、何度も何度も頭の中で考えている話だと思うんですよね。勝手に想像しているだけですけど。「お母さんは危険であることを承知で南極に行った」→「誰かの過失だったのか」→「そうでないなら、不運な事故だ」と報瀬は自分を納得させている。これは報瀬の頭では確立されている認識だと思う。報瀬は悪くないお母さんの同僚を恨むことはできない、大人として振舞ってる。

 ただこれは以前と同様、客観的に、論理的に正しいことを考えているだけ。子供から大人への成長に伴って、自分を客観視できるようになる。ただ、高校生の頃ってまだ客観的に見ているだけじゃどうにも対処できない大きな感情があって。それは自分自身が向き合わなければいけない。だからね~アニメの主人公って高校生くらいの年代が多いんじゃないかなって思うよね。そういう頃の感情って中学生ほど単純ではなくて、大人ほど静かでないと思います。

 

 

 「分かりません」「だから話すのが嫌だったんです!どう思っているかなんて全然分からない」

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 今の報瀬の気持ちとして、答えを出すなら「貴子の死を受け入れられない。というか、亡くなった前後で自分は何も変わっていない」この部分、まじで、こうなるよな...と想像しました。観測隊員であるお母さんの死と向き合う娘、っていう実際には考えるのが難しい、共感する人は少ないであろうキャラクターの気持ちの読み方、がなんでこんなに完璧にできているのか、不思議に思います。この気持をアニメ化したのもすごいなと思いました。

 だから、そこまでして南極に行く理由を報瀬はずっと探していたんだと思う。1話の「結局みつからなくて、遺品もほとんど無いままで。だから私が行って見つけるの」2話の「だって、お母さんが待ってる」7話の「強いて言えばそらを見るためかな」を回想=強い印象、宝箱を目的と言っている。1話と2話のセリフは死の実感が無いからだったんですね。あと、どれも正しいようで、1つ定まった理由はなかった。だから、それぞれの場面にあった考えを話していたっていうか、そうやって、自分の気持ちを思考から手探りしていくしかなかった。と思う。

 

 

 「変えるには行くしかないんです。お母さんがいる、宇宙よりも遠い場所に」

 結局、なんでお母さんが死んだ南極に行くのか、行って、何するのかなんて分からない。ただ何か変わるのかも、っていう僅かな光しか見えない。でも「なんか変わるのかも」って理由では南極に行かせてもらえない。だから色んな理由をそれぞれの状況で言ってたって側面はあるんじゃないか?って思います。分かりませんが...

 

 

それぞれの「諦めなさ」

 

「何度も何度も何度も。諦めかけては踏ん張って進んだの」

 しらせが何度でもチャレンジし続ける姿勢は、最初の観測隊の姿勢でもあり、現在の観測隊の姿勢でもあり、それは吟から報瀬に受け継がれた「諦めなさ」という事でもある。

 

貴子の失踪

 このカットが好きで。窓の外、水平より少し上から撮影していて、窓からカメラが引いていくことで、貴子から吟が離れていく感じを出している。それに加えて、吟がカメラに目線を向けることで、「綺麗だよ」って言っていたのが、南極の星空なんだという事が分かる。カメラアングルが完璧すぎない?このカットは。

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 これさー、星空が綺麗である描写って、この少し前にブリザードが終わって捜索ができるようになったよっていう比較として使われているだけなんだよね。だから、普通だったら窓の外を見る吟からカメラが引いた後に満点な星空入れるよね。そこをな~、「角度で分かるだろ」って感じで言われちゃうと、信頼感?みたいに感じてオタクはすーぐ嬉しくなっちゃう、好きになっちゃう。これだからオタクはちょろいよ~

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沈まなくなる太陽

 沈まなくなる太陽を見ながら、静かに泣いている吟。貴子の事を思い出していると思います。さらに、少し前の「雲みたいな人」で夕日を見ている部分と合わせて考えると、沈まない太陽が貴子を示している可能性は考えられると思います。10話では吟とかなえが太陽に向かって、「メリークリスマス」「ただいま」と言っている場面もあるし。さらに、12話のラストシーンで報瀬が貴子の事を乗り越えた時に、太陽が沈んで夜になる演出にも辻褄が合いますよね。

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「ざまあみろ!」

 報瀬の原動力の大部分はこれで、他人から無理って言われるほど行きたいと思うポジティブな天邪鬼だと思う。この気持って他の3人も観測隊も見返してやりたいっていう気持ちをどこか持っていて、だから「ざまあみろ!」は1つの叫びにまとまったわけで。ここで南極行く理由が定まっていなくて、シーンによってまちまちな報瀬がなんでここまでこれたかの答えがこの気持ですよね。ただし、南極に着いてしまえば敵は誰もいないので、貴子と真正面から向き合わなければいけないわけですよね。

 

 

10話に続く 

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よりもい8話の感想と考察と妄想

 

 

アニメ「宇宙よりも遠い場所」の8話に関するオタクの個人的な妄想、妄言です。

 

 

ポンコツ報瀬「わぁー、これがさいしゅい機とCTDかんそくしょう置ですってー」

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・ここで結月が「マイク...!近い...!」ってこしょこしょ話で言ってくるの、かなり“ヤバイ”ですよね。かなり“ヤバイ”よね?もっとこしょこしょされてえぇ~

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・日向以外、運動着と寝巻が全く一致しているんだけど、同じの2着持ってるのかな?流石に寝巻にしないよね?

 

・「そうじゃないよ。選択肢はずっとあったよ。でも選んだんだよ、ここを」「選んだんだよ!自分で!」っていうシーン。3話の終わりで「でも、オーロラってなかなか見れないんじゃないのか?」「聞いたことあります」に対してキマリの「じゃあもし本当に見ることができたら、南極でオーロラ見た世界で唯一の高校生になれるかも」って他の3人にはないポジティブさがあるって話をして、8話のこの部分でもそれが出ていると思う。

 

・トイレの後だけの寝ぐせ。

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・結月が海水なめる時の効果音がいらなくない?なんで日向と報瀬はほぼ無音なのに、結月だけこんな音入れたのか分かってないです。

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・結月が「真っ暗ですね」って言っているように、何の光もない海なんて実際は闇そのものだと思います。アニメ的に海は見えているけどね。なんならこの画とか船内の光も薄暗いから手すりも見えていないような暗さなのでは?と思っています。スリルが倍増しますねwだから、ここで「雨?」ってキマリが言うのも自然で、何も見えていなくて突然水っぽいものが降ってきたら雨だと考えると思うんですよ。

 

 

・船の外に出るシーンのスリル感とかドキドキ感ってすごくて、視聴者まで感情が昂ってしまうようなすごく好きなシーンなんですよね。

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 このシーンについて、「本当ならこんなことやってはいけない。危険性が目立ってしまっていて、良くないシーン」っていう感想を見たことがあるんですけど、いや4人が心配なのは分かるけど...って感じですね。さらに言えば、このシーンは重要な意味を含んでいると思っています。

 波は船の行く手を阻むし、船酔いとして4人の障壁にもなる。けれども4人でなら、それすらも楽しい思い出になる。「嘘じゃないよ。この旅が終わった時には絶対にそう思ってるもん」が示しているように、辛いことも仲間となら思い出に変わる、的な感じ。なので、最後は「波」それ自体を4人で楽しむ演出が大切な意味を持っているわけなんですよ。8話全体の流れの最後を、ダイナミックな映像に隠された「結」で締めている、と個人的には感じていて、お洒落だなぁと思っています。

 

・このシーンで、ピントだけずらしてそれぞれの表情にフィーチャーするのが良いね。

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・「そこにあるのは宇宙を思わせる無音の世界」

 これもタイトルの意味の1つでありそうですよね。

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ノローグについての話です。

 長いし、大したことでないので飛ばしてもらって結構です。

 多分ですけど、よりもいのモノローグってこんな感じだと思います。カッコがついていない限りキマリによるものです。

 

1話 ①OP前 ②旅に出れなかった時 ③ラストで旅に出た時

2話 ①OP前 ②新宿疾走時

3話 

4話 ①OP前 

5話 ①OP前(メグっちゃんによる回想) ②旅立つ時(4人で)

6話 

7話

8話 ①OP前 ②南極目前

9話

10話

11話

12話 ①OP前(報瀬による回想)

13話 ①ラスト(4人で)

 

 それぞれの役割を考えていきたいと思います。5話の②と13話の①は旅の始まりと終わりについての4人の語り。5話①と12話①はそれぞれメグっちゃんと報瀬の重要な回であり、そのための過去の回想。1話①は5話の旅立ちへの伏線。OP前のものは各話への入り、というか、つかみとして用いられている感じもあります。

 キマリの気持ちのモノローグってそもそも8話を除けば、1~4話しかないんですよ。1つ目の理由として、ストーリー最初の方はキマリの成長がメインであるから、というのが考えられますよね。逆に言えば、キマリにとって乗り越えるべき壁を5話で乗り越えてから、後半に行くにつれて、キマリ以外のキャラの問題解決に進んでいくんですよね。だから、モノローグが少ない。

 もう一つの理由として、序盤ではキマリの心情を他のキャラとの対話を通して伝えにくいから、っていうのがあると思います。1話であれば日向と結月はいないので、人数的にも機会が少なくなる。さらに、出会ったばかりである状況で、心の本音を打ち明けるってなかなかしないと思う。それがキマリであっても。この「序盤で心情を全て吐露することはない」って考えの話を続けると。主人公のモノローグで思いを表現することは、文章と映像の融合表現であり美しいんだけれども、気を付けなければいけない点があると思います。それは、主人公が思いを共有しているのは視聴者であって、他の登場人物と思いを共有できていない、という点です。だから、何でもかんでもモノローグにしてしまうと、キマリと他の3人との一体感が薄れてしまい、思ったことを言えないような関係に見えてしまうと思う。だから、その意味もあって、モノローグは序盤だけ。OP前のモノローグは「入り」っていう感じがあるから、あまり気になりませんが。

 ではその後どうなっていくかって見ていくと、1話2話ではクライマックスをモノローグで語っていて、3話は結月回なので飛ばし。4話でキマリのモノローグが無くなるはずです。これって、ここのクライマックスで「私、みんなと行きたい。みんなと一緒に南極星見つけて、オーロラ見て、かき氷食べて、ペンギンと記念写真撮りたい!絶対行こう!」って言葉にしているんですね。なんならこのシーンだって、4人が絶景に言葉を呑んでいる感じの画にキマリのモノローグで「その朝日を見て、思った。この4人で南極に行きたいって。」みたいな感じでもあり得たと思うんですよね。でも実際には思いを共有できているんですよ!4人で!気持ちを打ち明けることができた。なのでここからは、もうモノローグで気持ちを表現する必要ないので、4話以降でキマリのモノローグは少ない。っていう見方を私は勝手にしています。

 「いや、妄想が過ぎるわ。そんな細かい事考えなくていーだろ、てか意図して作られてないだろ」っていう指摘ももっともなんですけど、この考えで行くと、6話でのキマリが「私たちが見たことない所でも、知らない場所でも、いっぱいの人がいっぱいの生活してる。毎日毎日途切れることなく。それってすごい!」っていう、「ちょっと分かる」って感じのことをキマリにわざわざ話させた意味が分かってくると、思うんですよね。6話においてこのシーンって少し浮いてるっていうか、唐突感があるけど、夏の特別訓練を経てふと感じた気持ちを話せるような仲になった、的な考えがあるんではないかな、と勝手に思っています。この場面こそ、キマリのモノローグが自然だと思うんですよ。特に「じゃあここからまた世界中に向かって出てくんだね」「多分」より後のやり取りは。だってここではほとんどキマリが喋っていて、報瀬と結月は「何が?」「それはそうよ」「それ言ったら、日本だってそうよ」「今日もちゃんと学校あって、多分今頃、晩御飯で」「当たり前のことだけどね」「でも、分かる気がします」ってほとんど相槌ですからね。それにもかかわらず、モノローグではないのは、やっぱり重要な点であると考えました。

 ただ、8話は例外なんですよね。8話①では「でも今の私たちは、一歩踏み出せないままの高校生ではない。何かをしようとして何もできないままの17歳や16歳ではない」「それで十分だ」って部分があって。これはキマリの一歩踏み出せなかった「課題」についてですよね。この8話①のモノローグって、キマリの「そうじゃないよ。選択肢はずっとあったよ。でも選んだんだよ、ここを」「選んだんだよ!自分で!」ってセリフの裏付け的な意味があると思っています。キマリが1話で悩んでいた流れを汲んでいるから、このセリフの説得性が増しますよね。そのために序盤に問題を解決しきっていたキマリのモノローグが再び入っていると考えています。8話②は、キマリが話しているけど、キマリの感情っていうより景色の描写なんで、まあ、例外としてもいいかなぁと思います。

 

 

9話に続く 

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よりもい7話の感想と考察と妄想

 

 

アニメ「宇宙よりも遠い場所」の7話に関するオタクの個人的な妄想、妄言です。

 

 

3年前と現在

 3年前と今回では、荷物を運んでいると思われるトラックの台数の減少、報道陣の有無、「しらせ」→「ペンギン饅頭号」、画面全体の輝度が変化していると思います。

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 あと、3年前とほぼ同じ状況なのに、今回の吟もかなえもヘルメット被っているという変化は、やっぱり安全面強化のためかな?

 

 

 貴子がいた前回を思い出して、うつむいている吟が顔を上げるシーン。横顔がかっこいい、もはやイケメンですね。ここで荷物をクレーンで上げているのって、話の流れ的には意味がなくて、なんなら荷物側に人が必要なのに描かれていないから不自然さまであると思います。

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 本来ならこんな感じで、周囲に人がいるはずだから。

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 これは、3年前の同じ場面を回想して少しうつむいてしまっている吟をコンテナの陰に置いておいて、それでももう一度上を向く、という吟の気持ちを表している行動に光を当てたいから、コンテナを動かす必要があるわけですよね。このアバンタイトルの時点で、7話の要点がはっきりと描かれているわけですよね、いや~面白い。

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 3年前の今頃を思い出している吟の回想から始まるんですが、3年前と同じ変顔をするかなえも同じこと考えていたってことですね。2話の新宿疾走でも少し書いたと思うけど、南極観測隊組の大人組のいい意味での子供らしさ、みたいなのが感じられる。そしてOPに入る、いい流れ。

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出航前

 報瀬のセリフに「キャッチーで、ウィットで、センセーショナルな」が登場。このワードはペンギン饅頭のCMでのキャッチフレーズだと、4話で明らかにされています。台本とカメラをこなす日向は仕事ができる感が強いですね。

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 「大人として扱う」「大人と過ごす」ってところが7話以降出てくるけど大切な要素だと思います。これはよりもいのテーマの柱のうちの一つだと思ってて、南極に行く以前のダメなままで何もしない関係とか、母親の死を乗り越えられない状況とか、稚拙ないじめとか、ずっと一緒にいることでしか保てない友情とか、そういう「子供」(って言いきってしまうと語弊があると思うけど)から「大人」に4人がなっていく物語だと思います。だからこの時点でのキマリたちは「自分たちで考えなさい」って言われてる、という部分は大切なことだと思いました。

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 結月は高所恐怖症、OPでも描写ありましたね。怖い話が嫌いとか高い所が怖いとかは子供らしさですね。「なんで嬉しそうなんですか!」ってセリフいいね~

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 報瀬の寝ぐせ演出、2話でもありましたね。

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 あんまり喋らない吟が「どう、船内は?」って言っているとき、キマリの方に向いているのは、やっぱり4話の明け方にキマリと話したのが大きいと思います。

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 貴子が使っていた部屋ってことを伝えるのは、蓄光塗料の星空の伏線であるんだけど、吟が報瀬に対して、貴子に関することをこんなに軽く言うのか?って疑問を持ってしまう...

 

 結月が「資金不足」「隊員不足」「計画そのものが無謀」って言っている時にそれぞれキマリ、日向、報瀬を順番に写していくんですよ。これって狙っていると思うんですよね。キマリは南極へ行くのに掛かる費用のためにからバイトを始めたわけだし、日向はキマリと報瀬に出会うまでは仲間がいなかったわけだし、報瀬は2話での計画が無謀だったわけで。一度そう考えると、それぞれ自分の事を言われてドキッとしているような印象を受けるシーンに見えますね。個人的な意見ですが...

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「そらを見る」ということ

 「この船の隊員は絶対行くって、強く思っているから」っていうのがここの重要なセリフですよね。報瀬が「強く...」って反応しているように、報瀬と隊員って同じ志であると思う。それが7話ラストのポイントになるんですけど、ここではまだ、ピンときていない感じありますよね。そして「強いて言えば、今回はそらを見るためかな」っていう伏線。

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蛍光塗料のシーン

 「もしかして報瀬ちゃんのお母さんがやったのかな?」「かもな」って要りますか?要らなくないですか?私はこのために伏線張っているんだから、要らない...て思いました。もし分かりづらいなら、吟の「貴子が使っていた部屋だから」を回想として一瞬入れればいいと思うんですけどね~~、いや、かなり良い雰囲気なのに、もったいねーって感じてしまうんですよね。勝手な話ですが。

 蓄光塗料の星空、貴子が天文台を作ろうとしていたことを次のシーンで吟が報瀬と回想していたことからも、貴子がやったのでは?っていうのは示唆できると思うんですよ。だから、さっきも言ったんですけど、吟と報瀬の微妙な空気を崩してまで、「貴子が使っていた部屋だから...」っていう2人の間での会話を入れてしまう事に、やっぱり自分は違和感を感じてしまいます。当然、貴子が使っていた部屋を探してみても何も痕跡はなかった...からの、電気を消したら星空が!っていうのは驚きがあると思うから、そのために、事前に貴子の部屋の事を伏線として置いておく必要があったのは分かるけど。だから個人的な妄想としては、貴子の部屋について吟には言及はさせずに、かなえとかに言わせたいな~って思ってます。そうすれば、蓄光の星空の伏線を張りつつ、吟と報瀬が船に乗ってから初めての会話が「覗いてみる?」になると思うんですよね。それだと最高の空気じゃないですか?吟が「貴子が使っていた部屋だから...」ってセリフを言う必要性を自分が見逃しているだけなら、ごめんなんさいですが。

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 「宇宙よりも遠い場所 それは決して氷で閉ざされた牢屋じゃない」「あらゆる可能性が詰まった まだ開かれていない世界で一番の宝箱」ってこの後7話のラストで報瀬が叫ぶときの伏線であるのみならず、13話の最後の最後で報瀬自身が100万を「おたから」として置いてくる部分でも回収されていると思います。

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望遠鏡のシーン

 ここのつなぎ方好きですね、かなえの「そらを見るためかな」ってセリフと貴子が残したと思われる天井の星から、報瀬は外に出てそらを見上げてみようとするところだと思います。

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 これですよ!吟と報瀬の会話って「覗いてみる?」の距離なんだと思うんですよ。これがやっぱり、2人の間の初めて会話として欲しいんですよ...今の時点では貴子についてはこのトーンで喋るのが自然なのかなと感じました。勝手な意見ですが。

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 この報瀬の隣にある望遠鏡と吟の「覗いてみる?」って意味があると思うんですよ。望遠鏡を覗くという事が星を見る(そらを見る)ということで、それが今回の隊員ほとんどの思いなわけですよね。だから、ここの「覗いてみる?」って報瀬がこの観測隊の目的ないし願いを叶える為に一緒に旅してくれるか?っていう問いに近いと、個人的には考察しています。ただし、ここでは報瀬は望遠鏡を覗かない。まだ、覗かないんです。そこから吟が話し始めて、前回の事について、貴子の事について、今回の観測隊、隊員の話をして。そして、場面が変わって、報瀬がみんなの前で話すラストシーンで、目の前にいる隊員が、恐らく自分と似ている気持ちで南極に向かう仲間だと気づいて!あのスピーチができたんですよ。だからこの時点では報瀬は望遠鏡を覗くことができないと断言できると思いますし、同時に、7話が終わった時点での報瀬は望遠鏡を覗く気持ちがある、と言えると考えています。こう考えると「覗いてみる?」の一言が、とても巧なセリフであると思えますよね、こういう部分ほんとに評価されて欲しいです。

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 ここでの報瀬と吟の会話を他の3人は目撃しているんだけど、会話の内容までは聞こえているかどうかっていう話をさせて欲しくて、というのも9話で結月がこの時のことを「仲良さそうに見えましたけど」って言っているわけなんですが、この会話の内容を聞いていたら仲良さそうとは思わないのではないか、と考えられます。でも、この3人は7話で本当にこの船大丈夫なの?っていう部分をコミカルパートとしてさんざんやってきたわけじゃないですか。そこで吟のこの話を聞いて、「あぁ、この船に乗ってる人はそういう気持ちで南極に行くんだ。計画っていうのは、星を見ることなんだ」って理解してこそ、7話における起承転結になると思うんですよね。だから、会話の内容は聞こえていたと仮定した方が話の収まりとしてはベターかなとも考えています。なので個人的な結論としては、3人とも話を聞いていて、ここまで深い話をしている報瀬と吟の関係に対して「仲良さそうに見えましたけど」と結月は言っている、と解釈しています。

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 貴子が吟に「南極行きたいと思わない?」って尋ねた場所が、報瀬がキマリに「一緒に行く?」って訊いたのと同じ場所。多分高校も同じですよね、これは。こういう点からも、5話のようにキマリと報瀬の関係を貴子と吟の関係と比較するのは、興味深い考察になるんじゃないかなと思います。

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出航前夜のスピーチ

 泣いちゃうんだよなぁ、7話。キマリ結月日向がスピーチするところでも、「ひとりひとり抱えてるものがあって、ここまでこれたんやなぁ...」って涙ぐんでるのに、ここからの報瀬のシーンがやばいなぁ...

 

 「南極に向かいます」の後の隊員各々の表情で、報瀬は「自分と同じ気持ちなんだ」って気づいたんですよね、この表情だからさ。

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 観測隊と報瀬って全く同じ立場、状況だと言っても差し支えないんではないかと思います。貴子の死があって南極に向かう決意があること、しかし周囲の反応は厳しいこと、それでも何かを犠牲にしてでも行く覚悟があること、貴子に関して執着が残っていること。「3年かけて少しずつ準備して」もバイトを続けて100万貯めた報瀬と同じであるし。だから、ここで同じ気持ちの、同じ目的の、仲間になった。観測隊の一員になったと思います。それを報瀬が分かったシーンなんですよね。そういう見方では、4話のワンボックスの中での「一緒ですね!」もここに繋がってくるわけだし、100万もここで活きていると考えられます。

 じゃあ、なんで報瀬って、この時点までは隊員の人たちを仲間って思えていないかって言うと、これまでの周囲の反応があったからだと思うんです。周囲は報瀬を止めようとしてばっかりで、自分の理解者はいないと思っていたと思います。だから、報瀬の他人への敵対心があったと思うし。しかし、ここには報瀬と同じような気持ちを持った仲間がいて、貴子を失った辛さ、現状の環境の厳しさを抱えながらも南極に行こうとしている仲間がいて、あぁぁ、泣いちゃうわ。ここに報瀬が来れて、この船の一員になれて、良かったって、思います。

 

 報瀬の表情って「南極に向かいます」の前後で意味が違うと思うんですよ。どちらも戸惑っていることは確かなんだけど、後者は多分、観測隊の人たちの気持ちが分かったうえで、自分も同じ気持ちであるとどう伝えたらいいか、とかを戸惑っていると思うんですよ。表情を見れば違いが分かりますし、後者では瞳の中のハイライトが揺れたりしていますよね。

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美しすぎる!報瀬と日向の関係性

 

 ここで!6話が生きてくるわけですね!最高!!不器用な報瀬は自分の気持ちをうまく言葉にしようとして、でもできなくて、黙っちゃうんですよね。6話と同じ構造です。そこで!日向の後押しで!自分の本音をぶつけられるようになった報瀬なんだよ!!自分の思っていることを、遠慮せずに叫ぶ!それが小淵沢報瀬!!あー報瀬と日向の関係性、最高だ... 6話で報瀬が成長した部分が日向を救ってくれて、その報瀬らしさに救われた日向だからこそ、報瀬のために背中を押せるんですよ...最高の関係でしょ...

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 いや、しかも日向が報瀬の背中を押して、報瀬が思いっきり話せたということは、日向の「報瀬が思ったままを伝えればいい」っていうのが報瀬に伝わってるのが、いいんだよ。「背中をポンって押したら気持ちが伝わる関係」尊いなぁ!

 さらに、日向が文字通り背中を押す話をしていいですか?ここって報瀬がお母さん関連で悩んでいる点に着目すると、4話と重なってくるんですよね。そうしてみると日向たちが甲板で吟が「それでも集まり、それでもここにいる。この船はそういう船」ってセリフを聞いている前提があって(さっきも言ったけど、私は「聞こえていた派」です)。「南極に向かいます」に対する観測隊員の表情を見た時の日向たちの少し驚いたような表情は、報瀬と観測隊の人たちが”同じ”だと気が付いたのではないかな?と勝手に思い込んでいます。報瀬と同じタイミングで、日向たちも気づいたってことが言いたい。

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 もしね、そう考えていいなら、日向が報瀬を押し出すところの意味が深くなっていくんですよ!先に書いたところでは不器用な報瀬が自分の気持ちをうまく言葉にしようとして、でもできなくて、黙っちゃてることに、日向が気づいた。そして後押しした。いわば6話が伏線なんですよ。しかし、日向が報瀬と観測隊の人たちが”同じ”だと気が付いたとしたら、日向は観測隊の人たちがこれまで貴子の問題を抱え込んで(4話の報瀬のように)、孤独だった報瀬に、観測隊の人たちは寄り添ってくれるのではないか?少なくとも同じ問題を抱え込んでいるのではないか?っていう期待を持って、観測隊の人たちの気持ちを知ったにも関わらず自分から歩み寄れない報瀬に“一歩、歩み寄らせる“ために背中を押したことになってきて、貴子に関する話になってくる=4話のキャンプの時が伏線になってくるんですよ。4話の時点では報瀬に手を伸ばすキマリを制止している日向が背中を押した。だからここでは日向が報瀬の背中を押すべき時だと判断したと思いたいんですよ、個人的にね。そして、その背中を押すべき時っていうのは報瀬と同じ貴子の問題を抱えている観測隊の人に対して、報瀬の気持ちも伝える時なんだよ。

 

 日向がどこまで知っているか定かではありませんが、このシーンで、”背中を押すこと“が6話からの繋がりで、報瀬が”一歩、歩み寄る“ことが4話からの繋がりとして、別々の意味があったのなら!あまりにも物語として、アニメとして!美しくないですか!?

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 こんなん考えた後に、日向のこの表情見るともうね、心がね。苦しいというか、心の容量が不足しちゃって入りきらないよね。

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報瀬のスピーチに関する疑問点

 「キャッチーで、ウィットで、センセーショナルなリポートをしに、この船に乗り込みました!母が言っていた南極の宝箱、この手で開けたいと思います!みなさん!一緒に南極に行きましょー!!」

のセリフについての話なんですが。

 ・「南極の宝箱」について。

 南極の宝箱って何?に対する答えは1つじゃないと思いますが、個人的には13話で報瀬が旅立つときに話していた、「仲間と一緒に乗り越えられる、その時間を愛したんだと」っていう部分が答えなのかな?って思います。けれど、この時点で報瀬って南極の宝箱=星空であると考えているのでは、と思います。自分が報瀬ならそう思いそう。

 「宇宙よりも遠い場所 それは決して氷で閉ざされた牢屋じゃない」「あらゆる可能性が詰まった まだ開かれていない世界で一番の宝箱」のページって、南極から撮影したであろう星空の写真があるし、貴子が天文台を作ろうとしていた事実を吟から聞いているし、その貴子は星空を蓄光塗料で残したみたいだし。自分が報瀬の立場に立って考えてみると、南極の宝箱って星空っぽい、と思うと考えています。

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 もし、南極の宝箱が星空の事であれば、つまりは観測隊の目的である星を見ることであり、ここにきて観測隊の人たちの表情を見たことで、観測隊と同じく星を見たいっていう目的の共有ができた、と捉えられると思います。そうするとさっきのシーンで望遠鏡を覗かなかったことが活きてくるなと、考えています。「母が言っていた南極の宝箱、この手で開けたいと思います!」って、報瀬なりに、遠回しだけど、「観測隊の皆さんと、お母さんたちが見つけたあの場所で星を見たい!」って言ってることになる、と解釈できます。

 だから、「一緒に南極に行きましょー!!」って報瀬が気持ちを思いっきり言えたのは、ほんとに良かった。ここのシーンはだから最高なんだよ、「一緒に南極に行きましょー!!」「おー!!」で7話の全てがクリアになるというか。観測隊の気持ちを知った報瀬が、自分も同じ気持ちだとか、南極への強い思いだとか、星を見るためとか、これまでの困難な道のりだとか、貴子の死についてとか、全部ひっくるめて、本心のこのセリフで伝わってると思うんですよ。それがすごい。

 ここのさ、大人ってすごい良さが出てるんだと思うんだよ。リポートのために参加した女子高生が「一緒に行きましょう!!」って叫んだら「おー!!」って返してくれるの。自分はモブの歓声で泣いてしまいます。

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・「キャッチーで、ウィットで、センセーショナル」について

 ここまでの説明で「母が言っていた南極の宝箱、この手で開けたいと思います!みなさん!一緒に南極に行きましょー!!」の重要さは解釈できたと思うんですけど、「キャッチーで、ウィットで、センセーショナル」ってよく分からなかったんですよ。これって、7話最初のリポートで日向が報瀬に渡した台本の言葉ですよね。元々は七陣屋のCMからとってるみたいですけど。あれ、このセリフの必要性あるか?って思いました。

 でも他の3人の自己紹介を書き起こしてみると、

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「玉木マリと言います。キマリって呼んでください。えとー、私はここじゃないどこかへ、このままじゃないどこかへ行きたくて、気が付いたら南極目指してました。右も左も分かりませんが、よろしくお願いします」

 

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「白石結月です。3人より一つ下の高校1年生です。私は仕事でこの船に乗ることになっていて、実はとても嫌だったのですが、でも、誰かと何かをしたくてここに来ました。よろしくお願いします」

 

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「三宅日向です。明るく元気が取り柄です。受験勉強が始まる前に、何か大きいことを一つやりたいと思ってここに来ました。背は小さいけど心はでっかい日向ちゃん~よろしくお願いします」

って感じで、

①名前

②ここに来た理由

③よろしくお願いします

に加えて各々アドリブって感じだと思います。ここで、あ、そうか!!って気づきますよね。だから報瀬は名前を言った後に固まっていたのか!と。②ここに来た理由って報瀬は自分でもまだ整理できていないと思うんだよ、さらに直前に観測隊の人たちの表情を見ているし。気持ちの整理がついていない。だから、ここでどう言っていいのか分からなかった。そこで!日向が助け舟を出すんですね~報瀬のリポートの際に、日向が書いた台本にあった「キャッチーで、ウィットで、センセーショナル」が報瀬を助けたわけですね。あぁ~よく考えられてますよね。リポートのリハーサルの時に報瀬は「だから言ったでしょ!こんなの嫌だって!」って言ってるんですけど、最後の最後に日向の言葉が助けてくれるんだよね~お母さんの事とか、今はまだ整理ついていないなら、無理に言わなくていいよって、感じですよね。ここまで作品が作りこまれているの、作品愛がすごくて、本当に良さですよね。

 

 ここからはあくまで妄想の域なんですけど。じゃあ、なんで報瀬は言いにくいことを言わなきゃいけなかったのか?それで困ってしまったのかって言うと、かなえが「じゃあ、名前と、ここに来た理由を」って促したんだと思います。そんなセリフないじゃんって感じだと思うんですけど、4人が4人とも理由を話しているってことは、そうするように言われていないとやらないと思います。話すことが他にないわけではないと思うし。例えば南極でしたいこととかさ。4人がなんで一緒に行くことになったかとかさ。さらに、結月と日向って理由に対する答え方が、~なので「ここに来ました。」って被ってるわけよ。これってかなえに「ここに来た理由を」って言われてなきゃ、被らないと思うんだよ。だって、ただ理由を伝えたいなら~なので南極に行きたいと思いました。~なので同行することを決めました。とか言い方はたくさんあると思うから。日向が結月の言葉につられたって可能性はあると思いますが。だからかなえは「ここに来た理由を」って言ったはずなんだよ。でも実際には言っていない。

 このセリフが入ってない理由は。かなえが報瀬にこんな事を言わせるはずがないから。貴子の事を知っているかなえが、報瀬に対して気遣いが無さ過ぎるから。これに尽きると思います。だから、多分最初はかなえのセリフとして存在していたけれど、「ここに来た理由を」は無くなった。だから、答えのみが残った形で存在していると考えています。あくまで全部妄想ですけどね。

 

7話まとめ

 もう7話は本当に良過ぎる。大人のかっこ良さとか、報瀬と日向の関係とか。よりもいに感謝するしかない。

 

 

8話に続く 

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よりもい6話の感想と考察と妄想

 

 

アニメ「宇宙よりも遠い場所」の6話に関するオタクの個人的な妄想、妄言です。

 

 

キマリの謎の夢

 キマリの、自分が飛行機になる夢の話って謎じゃないですか?キマリの不思議なキャラ付けだと言えば、そう考えられると思うんですが、もっと意味があるんじゃないかなと思って、こじつけ気味に考えました。

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 1話の初っ端の「淀んだ水が溜まっている。それが一気に流れていくのが好きだった。決壊し、解放され、走り出す。淀みの中で蓄えた力が爆発して、すべてが動き出す」のシーンで「飛行機=日常からの解放、自由」のイメージの話をしました。

 

自由の象徴としての飛行機 このシーンでもう一つ注目すべきは、飛行機です。この場面のみだと「飛行機=日常からの解放、自由」という意味を持った描写だという断言は難しいと思います。 ©YORIMOI PARTNERS しかし、1話EDでは現実で飛行機が飛んでいる描写があり、「旅に出た自由さ」が表現されているわけなんですよね。 ©YORIMOI PARTNERS

よりもい1話の感想・考察・妄想 - @taji488 のtwitterの延長です。

 

 6話のこのシーンにおいてキマリが「私ね、よく夢で見るの。私が飛行機で」と言い、空に飛び立つという描写は、キマリの旅立ちへの憧れが飛行機のイメージであることが分かり、無意識下でそのイメージをキマリが頻繁に夢見ていることから、旅立ちへの憧れが窺えます。1話の飛行機のイメージを6話のこのシーンが補強している構造だと捉えられるかと思います。

 さらに詭弁を続けると、6話の飛行機の夢だけだと、その夢が単なる「寝ているときの夢」である可能性も否定できないと思います。しかし、1話の方のシーンは回想ではなく「寝ているときの夢」として「淀んだ水の決壊」が描かれていて、それにより、それが「願望という意味の夢」であると分かります。つまり、キマリの「寝ているときの夢」が「願望という意味の夢」に重なるという事実を作っていると言えます。そのため、「飛行機の夢」はキマリの「願望という意味の夢」に重なるといえるわけです。今度は逆に、1話が6話の補強になっています。

 この構造、個人的な妄想っぽいですけど。もし仮に、夢の中でキマリの願望とともに描かれた飛行機と、6話現実において「よく夢で見る」というセリフが、互いに互いを意味のあるものにしていたらとても興奮しますよね。6話の方がなかったら、飛行機の意味は弱くなっているし、1話の方がなければキマリの飛行機の夢は「寝ているときの夢」でしかないわけです。

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機内にて

 このシーン、周りの雑音入れた方が良くないですか?周り静かなのに4人だけめっちゃ騒いでる感じだから、他の客が全然いないのかな~?って思ったら、結構人多くて違和感を感じちゃいました。

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 報瀬が「落ち着かない~」って言った後に少し間が開いてキマリが「でも、まさか報瀬ちゃんも飛行機初めてなんて思わなかったよ」って話しかけているの、報瀬を気遣ったキマリのお姉ちゃんムーブっぽくて素敵ですね。

 

 

部屋決め

 キマリの寝相が悪いのは設定としてこれまでにもあって、これってキマリの子供っぽさを表す部分で、ここではそれに加えてキマリの横を決めるじゃんけんをすることによって、報瀬と日向が同じ部屋になるように話の展開をセッティングしているわけですね。上手いよね。

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・「オーウ!ムカーシ、ニホーンニ、スンデーター、ナツカシーネー!!」は最高。

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日向と報瀬

 報瀬が到着日の変更に難色を示してから、日向の表情を長い間、写していないんですよね。その報瀬の不安に対して日向は考えた末に、3人で先に行くように伝える。ここでやっと分かる日向の表情には、不安げな様子とか、寂しそうな表情は無くて、いつも通りの顔。ただ振り返り際に一瞬、悲しそうな表情なのがなぁ。多分これ、意図的に描いていると思うんですけど、そうだったら細かくて良い演出だと思います。

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 日向の散らかった荷物が、報瀬と話すときには片付いています。これはパスポートをなくして冷静さを欠いていた日向が、いったん落ち着いて頭の中を整理し終えて、報瀬に3人で行くように言った、という日向の内面の変化を表現しているのではないかな、と思います。

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 「お風呂入りたいんですけどー、いいかな?」って全然平気そうな笑顔の日向もいいですよね。ここで敬語になっているのが距離をとっている感じなんですよね~。一方で報瀬の表情は寂しそう。このシーンだけだったら、報瀬は全然悪くないっていうか、歩み寄ろうとしているわけだから、悲しくなっちゃうっていうか、いつもと違う日向に困惑しているっていう感じも含まれている表情だと思います。いいね~!

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 日向のへそチラ。残るはキマリ1人のみ…

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 ここら辺の日向って振り向いている画が多いと思います。これは日向が報瀬の気遣いに応じず、背を向けているのにもかかわらず、自分は報瀬に気を遣っているからだと思うんです。背中を向けつつ自分は振り返るってそういうことだと、自分は感じています。

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 しっかり者の日向が寝過ごしちゃったの、報瀬とのことを悩んでいたら、寝れなくなっちゃったから。とかだったら良いなという、キモ=オタクの願望です。


報瀬と日向の関係性

 ここの報瀬と日向の話って、自分中心で考えがちだったけど友達の事も考えるようになった報瀬と、報瀬が本来の性格を抑えて自分を気遣ってくれているのが、申し訳ないというか、受け入れられない日向の交差、っていう風にまとめられるんだけど、報瀬と日向の関係性大好きオタクなのでかなり長く話させてもらうと、

 報瀬と日向の性格的な共通点ってひとりぼっちであると思うんだよね。報瀬は我が強すぎて、周囲に馴染めずにいたわけだし、日向は他人に疎まれることを嫌って、自分の気持ちを隠して、弱みや本心を見せられないひとりぼっちだといえる。だから他人に気を遣われるっていうのが、自分が迷惑をかけて、はぶかれるんじゃないのかっていう不安になっていると考える。だから日向のスタンスとしては明るく気丈に振舞って、周囲の空気に合わせて、って感じなんだと思う。

 じゃあ、2人の性格における違いは?っていうと、報瀬が不器用で、日向は器用、というと分かりやすいと思う。報瀬が南極に行くって言ったときに、周囲は止めようとしたわけで。1話でもキマリの「南極に行けるの?」に対して報瀬は「みんなそう言う。ばあちゃんも、友達も、先生も、先輩も、近所の人も子供が行けると思っているのかって、いくらかかると思ってるんだって」って言っている。当然本気に思っていない周囲の人もいると思うんだけど、中には報瀬を心配して止めた人もいると思うんだよ。おばあちゃんとかは特にね。5話最後の出発の時に、仏壇に手を合わせるおばあちゃんの後ろ姿は、孫の安全を願う、その一心だったと思います。また、メグっちゃんじゃないけど、あまり現実的じゃない夢に向かって頑張って、それが叶わなかった時の落胆を考えて本心で心配していた人もいたかもしれないし。そうゆう人たちが言った「無理だ」に対して「ざまあみろ」って言ってやるっていう気持ちが報瀬をここまで動かして、南極に行ったわけだから、それは報瀬の長所であることには間違いないけれど、心配してくれていると受け取ることもできたのではないかなと。その点で報瀬は器用ではないと思っています。

 一方で、日向は器用な子だと思います。多分、陸上部で1年(?)レギュラーを取れたのも、物事への順応性とかに少なからず起因しているのでは?と考えています。優秀だからこそレギュラーになれてしまった日向は勉強面でも優秀で、人間関係でも2話で初対面のキマリや報瀬と、明るい感じで接してすぐに仲良くなっていると思います。キマリの性格の際にも少し書いたんですけど、キマリは他人と打ち解けるのが早く(物語の進行スピードに関わってくる)、これって天性のものなんじゃないかなと思うんですけど、日向の場合は意図的に明るくふるまって、他人と関わる、他人に疎まれないようにする、という意識があるんじゃないかなと個人的には感じています。これは「空気読め」と言われた陸上部でのいじめを引きずっているからだと思ってて、自分を守り手段であり、バリアを張っている感じだと思います。じゃあこれまでの日向と他の3人との会話は全部嘘で成り立っていたのか、と言われるとうーん、そういうわけではないと思うけど...元から元気溢れる感じだった部分も当然あると思うし。

 それで、この二人が出会って、まず最初の関わり方は3話で日向が結月が南極に行きたくない理由を聞くのが先って意見に対して、自分が南極に行くことだけを考えていた報瀬は自己嫌悪を感じる。日向の周囲への気遣いが自分に足りないものだと、報瀬は感じる。でも日向が言っているように、それは思いの強さがあるからこそで。

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 そして今回のこのシーンに戻ってくるけど、ここでも形としては3話とほとんど同じだと思います。報瀬の南極への思いが強いから、周りが見れなくてこのような状況になっている。いつも(3話のような場合)であれば、報瀬の猪突猛進な部分を冷静にたしなめるのは、日向の役割なんですよ。だから、6話のこのシーンって、「3話のように報瀬の足りないところを日向が補ってくれたら、万事解決だけど...もし日向がたしなめることができない立場(パスポート無くしたのは日向)だったら、報瀬ちゃん、あなたはどうするの!?」っていう課題を突き付けられたってことだと思うんだよ!いや、面白くないですか?パスポートを無くしたのが日向じゃなければ、不安になった報瀬は日向になだめられて(3話や、5話で噂に対して怒った時のように)、平和に終わっていたと思います。それは上で書いたように報瀬と日向が真逆のような性格で、互いに補い合えるから。でも常に補い合うだけじゃなく、自分の足りない部分は反省して変えていくので、その場合には今回のように日向がフォローできない状況になければいけないと思います。実際に今回の報瀬は自分の行動を省みて、日向に謝ろうとしているわけだし、報瀬自身での成長がみられると思います。

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 事の発端が日向がパスポートを紛失したことである以上、日向が悪くて、みんなに迷惑をかけたくないっていう日向の主張は道理にかなっていて、報瀬は反論できないんですよ。こういう日向の言論の正しさは5話のときに、悪い噂に激怒する報瀬を落ち着かせる時にも見られていることだよね。報瀬は3話の時に比べて成長していて、自分の気持ちを優先させていることに気づいたよね。だからこそ日向の気持ちを考えてなかったと思って謝るわけだけど、言葉のやり取りって結局は日向の土俵であるわけだから、気を遣うことにおいて初心者である報瀬とこれまでも周囲に気を配ってきた日向では報瀬に勝ち目はなく、逆に日向に気を遣われて、謝られて手も足も出なくなっちゃうわけで。「そうゆう話だろ」で黙り込んじゃった報瀬に対して、少しあきれた感じでため息を吐く。恐らく、日向としては少しいつもの自分じゃない感じに言ってしまった、と考えていると思います。そのあと、少し表情が柔らかくなるし。結局ここでは、報瀬は日向の事を考えすぎていて(?)、それがいつも通りじゃなくて、日向には気遣いに思えるから、報瀬が近づいて行っても距離が縮まらないんだと思う。

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 この寝る前のシーンの時点では、報瀬はまだ日向に寄り添うという形でどうにかしようとしている。これってやっぱり、報瀬が自分の短所が他人の事を考えられないことで、それを分かっているからこそ、どういえばいいのだろうっていう方向に迷走してしまっているのでは?と感じています。あとやっぱり、3話で日向に「思いの強さとわがままは紙一重である」って優しく言ってもらえて、それを意識したうえで、今度は自分が優しくしたいって考えてると思う。だから、気を遣うことに固執している。と、私は思っている。

 ただこれって報瀬からしたら、納得いかないよな~とも思う。だって、自分に優しく接してくれたから、自分も気を使ったら、距離をとられるって。なんなら今の時点でも、まだ、日向は報瀬に謝ったり、報瀬の事を気遣っているわけですよね。この時点では報瀬は陸上部の話を詳しく聞いてないから、なおさら納得できないよね。だからふて寝(?)するという行動は正しく思える。しかも、一見日向の話は筋が通ってるから、寝るしかないんだよな。

 

報瀬なりの解決方法

 1週目でもグッとくるシーンなんだけど、12話で報瀬が内陸へ行くか迷ったときに100万を出して、これまでの努力を、絶対に南極に行くって気持ちを再確認するシーンを見た後だと、100万に重みが感じられて、さらに良いよね。それをあそこで、ポンと出せるのがかっこいい。

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 結局、「3話のように報瀬の足りないところを日向が補ってくれたら、万事解決だけど...もし日向がたしなめることができない立場(パスポート無くしたのは日向)だったら、報瀬ちゃん、あなたはどうするの!?」っていう課題に対しての答えは報瀬の気持ちをぶつける、ってことでしたね。いいなぁ、このシーン...報瀬は長所を生かすべきなんですよ。「4人で行くの!この4人で!それが最優先だから!!」ってセリフがなぁ~、良いよね、熱くて。

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 このさー、「4人で行くの!この4人で!それが最優先だから!!」っていうのはさ、4話ラストで少し元気なかった報瀬に、キマリが「私みんなと行きたい!」「絶対行こう!!」って言ってくれたのが効いてると思うんだよね~。愛の循環、みたいなものが感じられる。

 

 日向は「居心地悪くなるっていうか。本心が分からなくなるっていうか。だから、高校も無理―ってなって、なるべく一人でいようと思って」って言っています。しかし、キマリと報瀬は他の人とは少し違う、嘘ついてない感じがあったからこそ一緒に南極に行きたいと思えたわけですよね。ここで2話のキマリと日向の帰り道のシーンに繋がってくるわけですよ。それで、「この人たちとなら!」って思えて、南極に行けることになって、それでもなお、相手の本心が分からなくなるのが怖くて、相手が優しさから気遣っててくれても、自分はそれを受け入れられなくて。陸上部の事をまだ引きずってるわけです...日向の話はあまりにも辛い話だと思います。「だから気にしないでいい。全部私の問題だから」とまで日向は言っちゃっているんですよ。そんな日向に対して、不器用で、口下手だけど、本心で、自分で思っていることを伝えてくれる報瀬の存在は、どんなものかって想像しただけで泣いてしまう。最高

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1話完結型のオチ

 報瀬のかっこ良さとポンコツさのギャップやばいね。ハマる。ストーリー的にも日向に負い目が残らないためにも、パスポートが見つかるのは必須ですよね。

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 ここで結月の「何か隠してますよね?」とドリアンが再び来るんだもんな~、1話の中での構成がちゃんと考えられてて高評価ですよね。

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 この日向の「まじかー」の言い方大好き。結月の「感謝しろです」の言い方大好き。キマリの「どれだけ心配したと思っているの」の棒読み感も大好き。

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6話まとめ

 シリアスが重めの回なのに、終わり方が綺麗すぎる、最高!ここがよりもいのすごいところで...報瀬が気持ちを伝えて、涙が出るような雰囲気にしておいて、そこからコミカルにひっくり返していくんですよ。実際に6話ではシリアスまたは感動的な割合の方が少ないと思っていて。それでもこれまでにキャラクターについての伏線を十分に張ってきているから、キャラの感情が理解しやすく、感情移入しやすく、泣いてしまうと思うんですよね。これがよりもいの長所ですよね~。一番最初に書いた「笑いながら泣けるアニメ」っていうのは、そのうちの50%は、こういう意図があって言っています。

 あと6話は、4人で旅をするっていう楽しいポイントがたくさん詰め込まれていて、4人のキャラクターの個性や魅力っていうのも存分に出していて、かなり良かった。視聴者である自分も一緒に同行しているような、引き込まれる感覚があった。旅アニメとしてのポイントもしっかりと抑えていると思います。

 

 

7話に続く 

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