よりもいにおける「思い込みの強さ」と「諦めなさ」の感想と考察と妄想

 

アニメ「宇宙よりも遠い場所」に関するオタクの個人的な妄想、妄言です。

 

 

 よりもいという物語におけるキャラクターの性格は重要で、このアニメの見所の1つだと思うんですけど、その中でも、キマリと報瀬と吟の性格やものの考え方はストーリーの軸になってくるほど大切な要素だと思います。色々考えた結果、「思い込みの強さ」と「諦めなさ」という2つの観点で、よりもいを読み解いていくと面白いなと思ったので、書きます。あくまで個人的な解釈ですが。

 

 

4話の吟とキマリの会話

 「報瀬ちゃんに似てます?」「さぁ、私は娘のことまではよく知らないから。ただ、あのしつこさと思い込みの強さはそっくりね、めんどくさい」「いいですよね~、めんどくさいの」「南極向きの性格ね、あなたは」

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 ここでは「あのしつこさと思い込みの強さはそっくりね、めんどくさい」っていうセリフの内容上、「しつこさ」って少し短所っぽく言われているわけだけれど、「諦めなさ」に言い換えて、「諦めなさ」「思い込みの強さ」の2つの要素について考えたいと思います。

 まず結論から言うと、貴子と報瀬が「思い込みの強さ」を持っていて、吟とキマリが「諦めなさ」を持っていると考えます。

 

 理由を説明していきます。

 

1話について

 1話は、一歩踏み出せないキマリが報瀬に誘われて一歩を踏み出した。とまとめることができると思いますが、この流れは偶然ではなく、キマリが失敗はしたけれど自分で決めて旅に出ようとしたことで、偶然100万円を拾って、自分の大嫌いな部分が分かってたからこそ、報瀬に気持ちを伝えて、応援してると言えた、という必然の部分もあると思いたいです。

 そして、キマリが能動的に行動したから変われたというのは「貴子の本」によって表現されていると思います。報瀬は一度キマリに本を渡しておいて、自分が南極に行く話をする。これに対するキマリの反応が他の人と同じであったため、報瀬は本を返してもらう。キマリにとって、報瀬と最初に話した時は失敗だったと言える。そこでキマリは図書館に行って、自ら、再びチャンスを得ようとする。そして報瀬とのシーンに繋がるわけなので、キマリが行動した事に意味があるという風に描かれていると思います。

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 そして、1話でこのように描かれている「失敗しても再び挑戦する」というキマリの性格は「諦めなさ」であると捉えられると思います。

 

 次に、なんで報瀬と一緒ならキマリは一歩踏み出せたのか、という話をしようと思います。複数理由はありますが、その1つとしては、目的を持っているからという理由が挙げられます。目的がはっきりしている報瀬と目的がはっきりした旅であれば、実行することができた、という部分があると思います。

 「あてのない旅に出る」「青春、する」の目標からわかるように、キマリの当初の目標は抽象的で、4話のラストで目的が自分で納得できるようになるまでに、明確な目的がない。だから1話時点でも、報瀬が持っている「南極に行く」という明確な目的が輝いて見えると思います。それが南極の本を読んだ時の印象深さとも関連していると思います。

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 しかし、1話時点での報瀬の目的っていうのは物語序盤では定まっていなくて、自分がどう考えているかは分からないが変わるには南極に行くしかない、と思っていたことが9話で明かされます。だから報瀬にもはっきりとした目標はなかった。けれど報瀬はキマリと違って南極に行く事を目的として、1人でも進み続けている。この違いは報瀬が「思い込みの強さ」を持っていることに起因しています。100万円あったら南極に行けると思い込んでいたり、2話の無茶な作戦でもなんとかなると自信満々だったり、そもそも自分の気持ちが分かっていなくても南極に行くという、南極を目指す目的さえも「思い込み」であると言えると思います。このように考えると1話の構図というのは報瀬の「思い込みの強さ」が「諦めなさ」を持っているキマリの背中を押したという風になると思います。

 1話では報瀬の長所がキマリの短所を補っているんですね。いくらキマリの気持ちが強くて、最終的に決心したのがキマリだったとしても、報瀬の後押しのおかげであることに間違いはないと言えます。

 

 

2話について

 1話で見られたキマリの「諦めなさ」は2話でも発揮されます。キマリから観測隊に関する懸念材料を聞いた報瀬は、キマリが嫌になったと「思い込ん」でしまう、でもキマリは「諦めない」から信号機が変わっても叫び続ける。これによって、キマリが渡るはずだった信号は赤になっていて、次の信号を待つことになり、報瀬が戻ってきて解決に至るわけですよ。1話とは逆に「諦めなさ」が「思い込みの強さ」を助けているんですよ。これは明らかに1話と対称性があり、報瀬の「思い込みの強さ」とキマリの「諦めなさ」が相互補完的な関係であることを描いているんですよ。1話と逆の補いを、2話の信号での別れという考えられた演出を用いながら見せることで相互的な関係であることを示すの、鮮やかすぎませんか?だから、すごく好きなシーンなんですよね。そしてこれは後の4話や9話における貴子の「思い込みの強さ」と吟の「諦めなさ」が補い合う関係であることの証明でもあると捉えています、個人的に。

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4話について

 「報瀬ちゃんに似てます?」「さぁ、私は娘のことまではよく知らないから。ただ、あのしつこさと思い込みの強さはそっくりね、めんどくさい」「いいですよね~、めんどくさいの」「南極向きの性格ね、あなたは」

 報瀬に引っ張られて南極を目指し始めたキマリに対して、吟は貴子の「私、誰も踏んでない雪に足跡つけるの好きなんだよねー!」(7話)という一言が南極を目指すキッカケとなっているので、報瀬に引っ張られるキマリ、貴子に引っ張られる吟、っていうのは似た関係だと思うんですよ。そうなると、「南極向きの性格ね、あなたは」ってのは吟とキマリを重ねて言ったセリフであって。吟は貴子のしつこさと思い込みの強さっていう性格をめんどくさいと思いながらも、どこかで良いと思っていて、それに引っ張られて南極まで来たんだと思います。だから「雲みたいな人」「雲ってすごいよね。掴めないのに、上見るといつもそこにある」っていう表現って「常に自分の先を進んで引っ張っている」みたいなイメージになると感じました。

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 貴子や報瀬は「思い込みの強さ」で吟やキマリを引っ張るという関係性があると考えたので、貴子も報瀬と同様に「思い込みの強さ」を持っていると考えました。実際、貴子は「私、誰も踏んでない雪に足跡つけるの好きなんだよねー!」っていう些細な理由から、南極に行くことを実現してしまう部分があるし。

 報瀬と貴子が「思い込みの強さ」を持っているのって、遠回りだけど、報瀬が貴子から影響されていると思っていて。報瀬は幼いころから貴子が南極に行くために必死な部分を見ているし、9話回想で「でも行くんでしょ?」に訊いて貴子は「うん」って答えている部分とかも、南極への思いの強さは感じていると思う。客観的に見たら、父親がいない(っぽい)状態で貴子は娘を一人にしてまで南極に行くわけだから。さらに、南極に行って無事帰ってこれる保証はなくて、実際に貴子は帰らずに報瀬には親がいない状況になってしまったわけだし。報瀬はまだ中学生なのに。ここまでして南極に行く理由っていうのを報瀬は疑問に思っていたと思う。そしてこの疑問は確実に報瀬が南極に行く強い思いを形成しているのは7話からも分かると思います。そういう形で「思いの強さ」が親から子に受け継がれたといえると思う。

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 吟の「さぁ、私は娘のことまではよく知らないから。ただ、あのしつこさと思い込みの強さはそっくりね、めんどくさい」というセリフを考えると、貴子と報瀬は「諦めなさ」を持っている風ではあるんですが、メインは「思い込みの強さ」だと考えています。報瀬はキマリの「諦めなさ」に度々救われるわけだし。

 

 

9話について

 縄跳びが上手くできずに、心折れそうになっている幼少期の報瀬に対して「できないの?」って吟が尋ねて、幼少時代の報瀬は素直に「はい」って答えている。そのあとに吟は初期の南極観測隊の話をして、諦めない事の大切さを説いたんだと思います。その結果、報瀬は縄跳びができるようになっている。

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 報瀬に足りていないものが「諦めなさ」であり、9話における貴子の「だってあの子には吟ちゃんの魂が必要だから」というセリフから、それを過去に吟が補っていると言えると思います。よって吟は「諦めなさ」を持っていると考えます。

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11話について

 報瀬の「思い込みの強さ」は、元チームメイトに怒るシーンで表現されていると思うんですよ。だって日向が自分のために怒って欲しいだなんて言えるわけないし、その部分は「日向がそうして欲しいと思っていると、私が勝手に思い込んでいるから」なんですよね。そしてその様子を見た吟は「準備しようか」と言って、天文台を立てる決心をするわけですよ!このシーンで内地へ行くか迷っていた吟が、報瀬の「思い込みの強さ」によって後押しされているんですよね!

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12話について

 報瀬が吟に内地に行くことについて相談するシーンで、「結局、人なんて思い込みでしか行動できない」「そう。けど、ずっとそうしてきたんじゃないの、あなたは」っていう吟のセリフが、報瀬の「思い込みの強さ」に11話で助けられた、ってことを物語っていますよね!11話の伏線があることで、この吟のセリフが輝く、輝く。11話で報瀬の「思い込みの強さ」を感じた吟が12話でそれを還元している構図、良いですよねぇ。もうやばいな、美しすぎる。物語の美しさで泣いてしまうよ。

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 さらに12話はこれだけでは終わらなくて、報瀬が南極に来ても何も変われない、という問題に衝突する。これって報瀬の「思い込みの強さ」が要因であると言えると思います。もっと繊細な話ではあるのですが、大雑把に言ってしまえば、報瀬が思い込みで目的を決めていたから、変われると思い込んでいたから、何も変わらない事が怖くなっていると見れると思います。

 そしてこれを助けるのもキマリの「諦めなさ」なんですよね。吟を頼れない状況になったところで、報瀬を補うのはキマリなんだと思います。報瀬の「いいよ、見つかるわけないよ!」に対して「諦めちゃだめだよ!」というキマリは「諦めなさ」そのものだと思います。

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 ここでも「諦めなさ」が「思い込みの強さ」を助けるという2話の構図を再構築しているわけですよ。しかも「思い込みの強さから生まれた目的」が、1話で背中を押して助けたキマリの「諦めなさ」によって、12話で「思い込みの強さから生まれた目的」が危機的状態に陥っているときに助けられるっていう、激熱な展開を盛り込んでいるわけですよ!

 

まとめ

 あくまで自分の妄想に過ぎないんですが、めちゃくちゃ面白くないですか?人間関係や性格、人間の成長のストーリー力があり過ぎないですか?マジで恐ろしい。よりもい、ヤバイ。やば過ぎる。面白いアニメとかいう次元の作品ではなく、もっと上に存在している気がしますよね。

 

 

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